2020.12.14

NEWS / NEWS / TOPICS

【VG Weekly Highlight #6】

Vendee Globe スタートから35日目、メインセールロック損傷で一度スタート地点に戻り、レースを続けていたファブリスが今度はPCトラブルで、無念のリタイヤを決断した。これで6人目のリタイヤとなる。
レースを続けている、27名のスキッパー達は、赤道に続いて、南アフリカの喜望峰を越え、南極大陸の周回に入っている。
次のポイントは、オーストラリアのルーイン岬だが、既にTop集団は通過しようとしている。余談だが、今日12月14日はノルウェーの探検隊が1911年に初めて南極点に到達した「南極の日」だそうだ。

■自分との闘い
今大会は新型フォイル艇が圧倒的な速さを見せ、後続艇を引き離してのレース展開を想像していたが、Topグループには最新艇だけでなく、前世代フォイル艇、ノンフォイル艇も追随しており、密な状況だ。このレース展開は、新艇以外の選手達の頑張りやベテランらしいコース取りなども考えられるが、違った要因もあるようだ。
スタート地点から、喜望峰までを第1レグと捉えると、現在は喜望峰から南米大陸のケープホーンまでの第2レグ。この長い第2レグをより楽しめるように、ここでは目には見えない選手の揺れ動く気持ちを紹介する。

本来レースの為、各スキッパー共に、少しでもスピードを上げて、一つでも順位を上げたいところだが、Mapを見てもらえば分かる通り、喜望峰からルーイン岬、ニュージーランドからホーン岬の二つのポイントで長い間、近くに大陸が見えない。

ケビンの遭難事故もあり、南氷洋に突入したスキッパー達はこれまで以上にシーマンシップを示し続けなければいけない。この1週間(12/8~12/14)で各スキッパー達は、次に紹介する通り、同じようなコメントを発している。レースで結果を残したい気持ちと、安全航海するために的確な判断をしなければいけない状況のはざまで、自分の感情を上手くコントロールしている。

*ジェレミー(JÉRÉMIE BEYOU/CHARAL)
「喜望峰で前方の船団に追いつきたい。皆と同様、ケビンの事で考えた。南氷洋に入るのに誰かが側にいるのは安心だからだ。CHARALは速い船だが、一緒にレ・サーブル・ドロンヌに帰るため、無理せず走らなければ。」

*ステファン(STÉPHANE LE DIRAISON/TIME FOR OCEANS)
「他スキッパーよりもポジションを北にとりアイスゾーンから離れよう。レーサーとして戦う思いとシーマンとして船を守る気持ちが入り混じる。この状況で難しいのは他チームを意識しない事。船の性能もチーム目標も違う。わかっているのに誰かが嵐に突っ込むのを見ると気持ちが揺らぐ。より自分自身に集中する時だ。」

*ヤニック(YANNICK BESTAVEN/MAÎTRE COQ IV)
「僕らは速く走る事が好きだけど、今は前線に道を譲り、減速しながら北東にコースをとる。船が壊れたらレースは終了。だからスピードを求めて前線に突っ込むのは無茶で馬鹿げてる。3位にいる事は嬉しいけど、このまま前線に突っ込むくらいなら減速して仲間が来る方を選ぶ。」

*ボリス(BORIS HERRMANN/SEAEXPLORER)
「ダミアンが2マイル後ろにいる。仲間の船が見えるのは嬉しいよ。心強いしね。」

数名だけの紹介だが、スキッパー達の心情が、大きく揺れ動いているのが分かる。ヨットレーサーとして、少しでも差を付けたいが、船を壊さず、トラブルがあっても対処できるよう、グループで固まって走る事も大事な要素の一つだと分かる。
長く過酷な南氷洋では、船を壊さないように船と、焦る気持ちを抑えるためにも自分自身との対話を重ね、レース全体を見通したマネジメント力がスキッパー達には求められている。

■天気予報を見ながら楽しむ
上述の状況を、より楽しむ為には、レースMapだけではなく、以下URLのWindyというサイトを見ながらレースMapを見るのも面白い。Windyは今後の天候予報が見る事ができ、風の動きも見える。その為、今後スキッパー達がどのコースをとるのかを想像しながらレース展開を見守るのも面白い。
https://www.windy.com/?35.712,139.800,5

■ジュール・ベルヌ賞
ヨット大国フランスで、いま注目されているヨット競技は、VGだけではない。レースではなく、世界一周の最速記録を目指し、Ultimと呼ばれるトライマラン(船体が3つ繋がっている巨大なヨット)で11月25日にフランスをスタートした二つのチームがある。

一つは、VG2016-2017にも出場していた、ジターナ(Edmond de Rothschild/Gitana)。もう一つが、VGの大会スポンサーでもあるソデボ(Sodebo)が運営しているチーム。両チーム共に最速記録を目指して夏の南氷洋へと向かっていたが、それぞれトラブルで挑戦を断念している。
賞の名前は、フランスの小説家で80日世界一周を執筆した事でも知られている、ジュール・ベルヌから取られている。フルクルーでの記録は、40日という小説の半分の日数で世界を回ってきている。2017年には、VG2012-2013で優勝したフランソワ・ガバールが、単独での世界一周記録を塗り替えており、42日16時間40分35秒の速さで世界一周を成し遂げた。

IMOCA60のVGだけでもスケールの大きいヨット競技だが、フランスのヨット界は裾野が広い分、頂上も高くそびえている。VGに出場しているスキッパーの中には、VGだけでは飽き足らずに、Ultimを目指している者も少なくないだろう。

*GITANA http://www.gitana-team.com/en/

*SODEBO https://ultim3.sodebo.com/#mat-et-voiles

関連記事