2020.04.20

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Message(Japanese)

皆さんこんにちは。

DMG MORI SAILING TEAMの康次郎です。

皆様から、康次郎は大丈夫か?チームはどうなっている?と、ご心配の声をいただいております。

今日は長文ではありますが、私やチームの状況。そしてレースの状況をご報告したいと思います。

 

今、私は日本に戻り、日々トレーニングをしています。

当初の予定では、ポルトガル・カスカイスでセーリングトレーニングを予定していましたが、カスカイスに入国した次の日「明日から港を閉鎖する」との報告を受け、すぐにフランス・ロリアンに引き帰してきました。カスカイスでのトレーニングを楽しみにしていましたがとても残念です。フランスも同様に今も港が閉鎖しており、セーリングできない状態にあります。

フランスでは外出原則禁止になっております。人と人との接触を避けなければなりません。

DMG MORI SAILING TEAMではオフィスに一人、ヤードに一人、船に一人、あとは自宅のガレージなどを使ってカーボンワークをしております。週に一度全員でテレビ会議をしながら互いにローテーションを組んでの作業です。

 

5月、6月に予定されていた、大西洋横断レースのThe Transat CIC(フランス・ブレスト~アメリカ・チャーレストン)とNY-Vendee(アメリカ・ニューヨーク~フランス・レ・サーブル・ドロンヌ)は延期となる見込みです。IMOCA(協会)は出港時や入港時に人が集まらない無観客レースを考えています。島周りの大西洋レースです。

本番のヴァンデ・グローブですが、先日予定通り11月8日にスタートをすると発表してくれました。

このようにフランスではセーリングができない状態が続きそうだったことで、3月末に帰国しました。今は一人でトレーニングをしております。

 

最近はよくこんな質問を受けます。

「一人で長く航海をしていて孤独ではないのですか?」

今、コロナウイルスの影響で大勢の方が自宅待機状態だと思います。

そんなこともあり孤独を感じている方々が多いのでしょう。

まず、答えから申し上げます。

まったく孤独ではありません。

更に言うと孤独を克服する必要もなく、毎日充実した日々を過ごしていました。

今も、です。

確かに、私の一番長かった航海は最初の単独無寄港世界一周でした。その時は176日ずっと一人です。僕の周り何百キロ、何千キロと人が居ません。

考えてみればヴァンデ・グローブほどソーシャル・ディスタンスの長い競技は他にはないでしょう。

 

「孤独」とは何か?

本当の自分とあなたの考えていることがずれているときに感じます。

つまり、孤独は人数や外的要因で起こるのではなく、自ら孤独を作り出しているのです。

私はたった一人大海原に身を置きます。周りには何百キロ、何千キロ、誰一人いません。

その時に僕はどう思っているかです。

夢があります。希望があります。仲間で作り上げた愛艇があります。良きライバルがいます。そして港には愛する家族や仲間が待っていてくれます。

とても孤独など感じることはできません。燃えています!

 

もう一つ、シングルハンドレースは死と隣り合わせです。日本では「板子一枚下は地獄」と言われています。

「死」を身近に感じることによって、「生」を強く感じることができます。

荒れた海の中、どんぶり飯を食べているときに「あぁ、俺は生きているんだ!」何度も体験しました。

長い航海から帰ってくると、テーブル上にコップを置くと、おとなしくそこに居てくれます。ありがたいです。トイレに入るとなんと、トイレが動かないんです!ありがたいです。

普段、陸(おか)で生活していて当たり前で感謝できないことが、素直に感謝できます。

家族や友達とカフェで話すことや、好きな仕事やスポーツをできる何気ない日常が、実は素晴らしいことだったとこに気づかされます。

感謝している時って、気持ちがいいですよね。

孤独だな、辛いな、苦しいな、心配だな、不安だな、寂しいな。これみんな心のサインです。

本当の自分があなたにサインを送っています。「違っていますよ、そっちではないですよ」と、

本当の自分と考えていること、やっていることが一致していたら、同じく心からサインが出ます。

楽しいな。うれしいな。気持ちいいな。なんだかワクワクするな。

どうかこれを機会に自分の心の声に耳を傾けてみませんか?

私の競技は自分との対話のとても長い競技です。

すべては自分で決断しなければなりません。

常に自分の心のコンパスを磨いていないと正しい方向が見えなくなってきます。

夢も希望も湧水のごとく常に内から外に向かって湧き出ます。

湧き水はたとえ雨が降っても、泥水が入って濁ることはありません。

常に内から外に向かってきれいな水が流れているからです。

 

先日、天気が良かったので久しぶりに故郷である鎌倉の海岸を一人散歩しました。

子どものころ、「この水平線の向こうに何があるんだろう」と思った僕の原点です。

海は世間の騒ぎをよそに、静かに波打っていました。

自宅や事務所では居合のトレーニングです。

久しぶりに真剣を振りました。心が集中し引き締まります。迷いも晴れます。

皆さん、私たちのチームは大丈夫です!

各自、成すべきことをし、ヴァンデ・グローブ完走に向かって今も走り続けております。

康次郎 2020/04/21

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