2020.11.30

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【VG Weekly Highlight #3】

Vendee Globe スタートから21日、ここまでの他チームのレースハイライトをお伝えします。

スタートから21日間が過ぎ、二人目のリタイヤが決まった。最多5度目の出場で、優勝候補筆頭として新艇で出場していたアレックス・トムソン(ALEX THOMSON/HUGO BOSS)が、バルクヘッドのクラックに続き、右舷ラダーを損傷してレース続行が難しくなった為だ。リタイヤこそしていないものの、一旦スタート地まで戻って遅れをとっているジェレミ(JÉRÉMIE BEYOU/CHARAL)、そしてリタイヤしたアレックスと、優勝だけを目標にレースに参加していた前評判の高かった二人が困難に直面し、レースは混迷を極めている。

■リタイヤ表明した優勝候補のアレックス
ノンフォイル艇で善戦しているベテランスキッパーのジャンと同じく、最多5回目の出場のアレックス(ALEX THOMSON/HUGO BOSS)に再び試練が襲い掛かった。先週既報したバルクヘッドのクラックに続いて、今度は船の進路を司るラダーが損傷してしまった。ラダーは左右両舷にそれぞれ設置されているのだが、右舷側が損傷したそうだ。ラダーを修復する事が難しいと判断した彼らは、リタイヤを決断し、現在は南アフリカ・ケープタウンに向かっている。

チームによっては、予備のラダーを搭載して、このようなトラブル時にパーツ交換をするのだが、アレックスの様に優勝を狙うチームは、可能な限り船を軽くしてスピードを重視するため、予備ラダーを積んでいない。完走を目指すのか、優勝を目指すのか、チーム毎の目標や予算に応じて、船の装備品が決まり、それによってレースの結果が左右されるのも、このレースの面白い所だ。

■低予算で挑むスキッパー
前述のジェレミやアレックスの様に、お金と時間をかけ、優勝を目指すチームは限られている。
彼ら以外にも、レースに魅せられてチャレンジしているスキッパー達も紹介したい。
女性スキッパーや、新艇、パラリンピアン、60歳を超えても挑戦する最年長者、夫婦で出場しているサマンサとロマンなど注目するべきポイントは多いが、ここではセバスティアン・デストルモ(SÉBASTIEN DESTREMAU/MERCI)を紹介したい。

前回の2016-2017に続き2回目の出場となるが、彼のヨットは一部が段ボールでできているのだ。今回のVGに出場しているヨットの生まれ年は大きく分けて4つのグループに分けられるが、彼の船は1998年製と一番古いグループの船だ。これまでに多くのセーラーに愛されてきた船だが、予算も時間もなかったためか、ウィンチやシートなどが集まる操舵エリアを覆う屋根がなんと段ボールで作られている。もちろん防水加工はされていると思われるが、万全ではない装備で世界一過酷なレースに挑む姿からは、彼がどれだけ海に魅せられているかが分かる。

また、11/24の彼のレポートには「キールボックスの油圧、パッキン破損、オイル蒸気が船内に充満、油漏れの修理、チューブ交換、一つ直しても、次から次に故障。暇じゃないよ!」と漏らしているが、スキッパー達の背景を理解すると大変な状況自体を楽しんでいるのだと読み取る事もできる。

このように、レースの順位だけでなく、出場しているスキッパーの思いや背景、船の歴史を調べるのもVGの楽しみ方の一つだ。

■恒例行事の赤道通過祝い
リタイヤしたニコラを除き、最後尾のジェレミも赤道を越え、各チームVGでの恒例行事、赤道通過のお祝い酒を披露している。白石は長年サポートしてもらっている「八海山」で乾杯!他のスキッパー達も、ビールやシャンパン、赤ワイン、ラム酒にシードルでの乾杯と、ここでもスキッパー達の個性が表れている。

■シャルリーの独走
先頭集団は南緯40度まで南下し、荒れた海域を東へと進み始めた。そんな中、独走状態に入ったのは、シャルリー・ダラン(CHARLIE DALIN/APIVIA)。

ほとんど同じコース取りをして、並走していたトマが、11/24 UTC03 :00頃に左舷フォイルを損傷してしまった。トマは専門家たちにも相談した結果、損傷部分を切断して、右舷フォイルのみでのレースを続行する事になった。

2位以降は団子状態で固まってTopを追随している。レースは、厳しさを増す南氷洋に入っており、今まで以上に何が起こるか分からない。各艇からのレポートに驚かされる日々が続きそうだ。

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