2020.12.22

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【VG Weekly Highlight #7】

Vendee Globe スタートから44日目、レースは日を追うごとにスキッパー達を苦しめている。
序盤からここまで、トラブル無く航行したチームは一つもなく、皆揺れる船上で、懸命に修理しながら走り続けているが、船に積載している物資も限りがあるため、これからのトラブルは致命傷に繋がりやすい。
白石康次郎に目を向けると、日本と経度が近くなり、時差も徐々に少なくなっているので、これまでとは違ったレポートが期待できそうだ。

■追い上げるジェレミー
10日間のビハインドがありながらも、ジェレミーは艇速を上げ次々に先行艇をかわし現在21位まで順位を上げている。前方には15位のアランまで6人が走っているが、その距離約900nm(1,670km)と差を縮めており射程圏内に捉えている。メインセールの修理に約7日間を要した白石にも同じ事が言えるが、大きなトラブル無く走っていれば、どんなレース展開になっていたのだろうと想像するだけでも楽しくなる走りを見せてくれている。

セーリングファンが想いを馳せているのをよそに、スキッパー達はいたって冷静にレースを進めている。ジェレミーは12/20にオーストラリアのルーイン岬を前に「典型的な前線の連続で良く走りオーストラリアに近づいている。これから注意しなければいけないのは、タスマニア付近からの前線。かなり激しそうなのでコース調整が必要。前に追いつきたいが、皆素晴らしいセーリングをしているので、今の目標はケープホーンまで無理をせずに船を大事にして大西洋北上の時に100%の力を発揮すること。」と冷静に海況を見ながら、ゴールだけを見続けている。

これだけのパフォーマンスを披露しているジェレミーが、大西洋に戻り100%で走ったらどんなに速いのだろうと、期待せずにはいられない。

■洋上からのクリスマスプレゼント
赤道通過では、皆ポセイドンとお酒を酌み交わしたが、次に待ち構えているのはXmasと年越しだ。一部を除きレースは大混戦で、洋上で互いが見える位置で走っている。12/15にドイツ人スキッパーのボリスが上げたVTRでは、目と鼻の先にルイ・バートンが走る姿と共に「自艇の周りに5艇も見える!」とレポートがあった。今年のスキッパー達のXmasは、賑やかになりそうだ。
過酷な状況でもサービス精神旺盛なスキッパー達は、応援してくれている子供達にVTRやPhotoレポートを通してプレゼントを考えている事だろう。スキッパーが洋上のサンタなら、愛艇のIMOCAは海の上を走るトナカイと言ったところか。

■思い出深い船
白石がVG2016-2017に出場した際に乗っていたSpirit of yukoh Ⅳは、フランスの若手スキッパー・バンジャマン(30歳)によって再びVGの舞台で勇ましい姿を見せている。フォイル艇や有力スキッパー達の間に割って入る形で、現在6位と大健闘の走りをし、百戦錬磨のジャン・ル・カムを「バンジャマンも凄いよ。減速せずにずっと走らせてる。」と唸らせている。

2019年6月、フランス人の若者は小さいバックと共に一人で日本へとやってきた。理由は一つ。VGに出場するために、新艇建造が決まった白石からSpirit of yukoh Ⅳを購入するためだ。

彼が来日する前に一度クルー達が下見に来ていたため、バンジャマンの滞在期間は短く、船の輸出手続きをするだけで、彼の多くを知る事が出来なかったが、「こんなに小さな体の青年が一人でIMOCAを操れるのかな。」と感じた事がまだ印象に残っている。しかし今思えば、VGに出場するだけでも凄い事なのに、このレース展開も相まって、本当に失礼な事を考えてしまったなと、レースを日々追いかけながら反省している。

話がそれてしまったが、白石が愛情を注ぎ、命を預けた船の活躍を多くのファンがSNSなどを通し自分事として喜んでくれているのは、嬉しい限りだ。白石が良く口にする「みんなの愛情を乗せた船」は乗り手が変わっても受け継がれているのだと感じる。
Spirit of yukoh Ⅳ 以上にDMG MORI GLOBAL ONEにも愛情を注いで、安全航海と一秒でも速くゴールする事を祈りたい。

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