2020.12.08

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【VG Weekly Highlight #5】

【VG High light #5】
Vendee Globe スタートから29日目、ケビンの救出劇からセバスチャン、サマンサの2名がリタイヤした。
過去の完走率54%、吠える40度と言われる南氷洋が、選手達を苦しめている。

一方レースを続けている28名の選手達は、大きく分けて3つのグループで動いており、先頭集団はケープタウンを越え、オーストラリアの南部へと向かっている。
次点はケープタウン沖、最後尾はこれからケープタウン沖と言った構図だ。

■ケビンの救出劇
順調にレースを進め3位につけていたケビン(KEVIN ESCOFFIER/PRB)が、22日目の11/30に、船体が二つに割れてしまいメーデーを発信。ものすごい速さで船内が浸水する中、冷静な判断が運命を決めた。ケビンは迷うこと無くヨットを放棄して、素早く救助ボート(ライフラフト)へと乗り移り救助を待つことに。

いち早く遭難海域に到着したのは、ジャン・ル・カム。暗闇と荒れた海の中、ライフラフトを見つけケビンの姿を確認するも、救助準備で少し目を離した瞬間にライフラフトを見失ってしまう。しかし、諦めずに捜索したジャンの目にフラッシュライトが飛び込んでき、ケビンを無事に救出した。

この救出劇は、マクロン大統領が賛辞を贈った事などを含め、多くのニュースソースで扱われているので、詳細は省かせて頂くが、特筆すべきは救出したジャンとケビンが所属するチームPRBとの関係だ。

2008-2009大会に出場していた、ジャンは船底のキールバルブが欠落し船がバランスをとれずに真っ逆さまになってしまい救助を要請。その時にジャンを救助したのがPRBのヴァンサン・リュ(当時のスキッパー)。何ともドラマチックな話ではあるが、こういった出来事をフランスではニュースだけでなく、子供達は祖父母や両親から伝え聞いている。VGをスポーツとして楽しむだけではなく、親子何世代にも渡って過去の話を交えながら一緒に楽しみ、地球を学び、文化として深く根付いているのだ。

■前を向き続けるスキッパー達
完走率54%と言う過去の数字が物語る様に、今回のレースでもリタイヤが増えてきた。
南氷洋の入口ともいえる南アフリカのケープタウン沖でセバスチャン(SÉBASTIEN SIMON/
ARKEA PAPREC)とサマンサ(SAM DAVIES/INITIATIVES-COEUR)の2艇が次々にUFOと衝突。二人とも受けたダメージを確認したところ、それぞれフォイルとキールを大きく損傷していた。二人とも陸上のショアクルーと連絡を取り合い全力でレース続行を試みたが、これまで走ってきた大西洋とは異なり、南氷洋に差し掛かっているこの海域では海の表情が一変する。吠える40度線と呼ばれる荒れた海域での、船外修理は身の安全を確保する事も難しく、リタイヤする事も必要だ。

結果として、セバスチャン、サマンサの二人は多くの時間と情熱をかけ挑んだレースを退く事になってしまったが、二人の情熱は消えてなく、既に前を向いている。
セバスチャンは、残念でならない気持ちと共に「支えてくれた多くの方にお詫びします。望みは一つ。4年後に再び戻ってくる事です。この素晴らしい経験をさせて頂き感謝で一杯です」と再チャレンジを誓っている。

ヨット活動を通し、心臓病の子供達へのサポートを行っているサマンサは、リタイヤはするが南アフリカでヨットを整備し、レースとは関係なく世界一周を続行する意思を表明している。「修復は困難だが、冒険は終わっていない。心臓病の子供達の為にも、この船で世界一周する」と子供達の未来のために、サマンサはまだ歩みを止めていない。

早々にディスマストしたニコラ、優勝候補のアレックス、遭難したケビンを含め、戦列を離れた彼らの冒険が続いている事にも注目したい。

■地球は丸い。南下するルイ・バートン。
皆さんがレースをご覧いただいているMapは、メルカトル図法で平面図だが、地球は丸い。地球儀で考えてみると分かりやすいが、南極大陸に近づけば近づくほどに地球の外周距離は短くなり、走行距離が縮まる。しかし、南に下れば大陸から流れ出た流氷や、吹き荒れる暴風にさらされ危険が増す。過去のレースでは、速さを求めるがあまり、南へ南へと進路をとったスキッパー達が遭難する事故が多発した。その為、近年のVGではスキッパー及び、万が一救助に行くレスキュー隊の安全確保を目的に、アイスゾーンと言われる航行禁止エリアが設定されている。

そのアイスゾーンぎりぎりを攻めているのが、フライングスタートした12/7時点で3位のルイ・バートンだ。ペナルティタイムはレース中に精算を終え、現在は解消している。

レースは3分の1を終えたが、まだまだ難所は続き、過酷さを増してくるが、1艇でも多くの船がレ・サーブル・ドロンヌへと戻ってくることを祈りながらレースの行方を見守りたい。

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