2021.01.21

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【VG Weekly Highlight #10】

Vendee Globe スタートから73日目、Top集団は赤道を越え北半球に再び戻ってきた。
過酷なレースに挑んだ33名の勇者達の冒険がフィナーレに近づいている。
また、残念ではあるが、最後尾を走っていたセバスチャン・デストロモがリタイヤをし、NZへと寄港した。

■熾烈なTop争い。カギを握るのは情報
VG2020-2021は、ゴールを目前に、例年では見る事ができない程の熾烈なTop争いが繰り広げられている。
12月中旬から先日のケープホーン越えまでTopをひた走っていたヤニックが急に失速。現在首位の座に座るAPIVIAのシャルリーから約300nm(約550km)の間に8艇ものIMOCAが連なって走っており、9位のジャン・ル・カムまでが優勝を狙える位置でレースを進めている。

先頭を走るのは、シャルリー。赤道無風帯を越えて、北米から欧州へと吹く貿易風をつかもうとしている。その差、120nm(約220km)で3位を走るルイ・バートンは、「気象予報の研究にかなりの時間を割いて、どのコースを走るか思案中。ライバル達が固まって走っているコース取りで違いが出る。精神的にはラストスパートの攻撃態勢だ」と語り、残り僅かな道のりでは、一つの判断ミスが大きく順位を入れ替える事を示唆している。

また、突如として失速したヤニックからは驚きのレポートが、届いた。詳細は以下の通りだ。
「ケープホーン通過から数々の問題があり、トラブルに悩まされている。発表をしないようにと思ったが、もうこれ以上は隠せないと思う。ケープホーンでの大きな低気圧、船首から酷い突っ込み方をした。船首にある全てのパーツを波にさらわれてしまった。船首のスタンション(安全柵)、ファーラー(ジブセールのパーツ)は何も無い。何枚かのセールも使えない。修理に全力を注いだが、今の状況ではセールチェンジを繰り返さなければいけない。仕方がない、これがVG。最後までトップ争いをしたかったが残念だ。今は応援し続けてくれている多くの方の為に、絶対に諦められない。より良い形でフィニッシュする事に最善を尽くします。」

船の状態を見極めて、優勝争いが困難な状況に陥ってしまった事が、ヤニックのレポートからは伝わってきたが、他の選手達からは、これまでのようにレポートが更新されなくなった。レース終盤で、多くの選手に優勝の芽が残されているこの混戦状態でスキッパーの心情を考えると、レポートを書くよりもレースに集中して、虎視眈々と優勝を目指しているのが伺える。先述した気象を含め、他艇のコンディションなども、陸上のショアクルーから耳に入るため、レースは情報戦の様相を呈してきた。

■歴史は繰り返されるのか、それとも塗り替えられるのか
1989年から始まり、今大会で9回目のVGの歴史を振り返ると、フランス人以外の優勝者は一度もない。その歴史を塗り替える可能性が高かったのが、イギリスのアレックス・トムソンだったが、喜望峰でリタイヤをしている。しかし、ドイツ人スキッパーのボリス、伊達男のジャンカルロが、その可能性を残している。歴史は繰り返されるのか、それとも塗り替えられるのかにも注目だ。

ゴールまでの所要日数の記録を更新する事は叶わない今大会だが、ジャンカルロ(45歳)、ヤニック(48歳)、ジャン・ル・カム(61歳)のいずれかがTopでFinish lineを越えれば、2008-2009に優勝したミッシェル・デジュワイヨが持つ最年長優勝記録(43歳)を塗り替えるのにも注目だ。

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